Vol.154「環境教育 -知識から行動変容へ―」 早渕 百合子


「環境教育 -知識から行動変容へ―」

早渕 百合子(九州大学グローバルイノベーションセンター)

 

 

 

 


 環境教育は知識の記憶や理解のみではなく、環境行動の実行へとうつることが望ましい。教育で得た知識は、はたして行動へとうつるのか?
 知識と行動について、アンケート調査、クロス集計を行い、エネルギー・環境問題に関する知識の程度(Y軸;Knowledge)と環境行動の実行頻度(X軸;Action)との関係を図のように図式化した(早渕、2008)。
各グループは次のとおりである。

【Group 1】エネルギー・環境問題について知っているが、環境行動は行っていない。
【Group 2】エネルギー・環境問題について知っており、環境行動も行っている。
【Group 3】エネルギー・環境問題について知らず、環境行動も行っていない。
【Group 4】エネルギー・環境問題について知らないが、環境行動は行っている。

図:環境教育を行うことで期待される行動の変化(早渕 2008)

 

 エネルギー・環境問題に関する知識を有している学生ほど環境行動を実行し(Group 2)、問題を知らない学生ほど実行頻度が低かった(Group 3)ことから、知識を持つことは環境行動の促進になりうる、つまり、環境教育が行動変容には重要であることがいえる。
 一方、問題は認識していても、行動が習慣されていない、利得が少ない行動については実行に至らないケースもある(Group 1)。また、知識の有無に関わらず、環境行動を実行しているケースもあり(Group 4)、これは幼い時からのしつけや生活習慣によるものであると考えられる。
 環境教育はGroup 3からGroup 1へ導くのみならず、Group 3からGroup 2への行動変容が重要である。環境教育の「知識から行動変容」への探求はこれからも続く。

 

早渕 百合子

【プロフィール】

早渕 百合子(はやぶち ゆりこ)

現職:九州大学グローバルイノベーションセンター准教授
京都大学大学院エネルギー科学研究科博士課程修了、国立環境研究所を経て、現職。

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