Vol.149「 オリンピック観戦から3Rの再認識と行動へ」 村山 晋一


「オリンピック観戦から3Rの再認識と行動へ」

村山 晋一(一般財団法人環境事業協会)

 

 

 

はじめまして、一般財団法人環境事業協会の村山晋一です。6月末に高木理事長の後任として理事長になりました。

オリンピックメダルとマイボトル

 東京オリンピック閉会の翌日にこの原稿を書き始めました。選手の躍動と歓喜と涙に日本中が沸いた2週間余りでしたが、閉会式で「メダルは国民の協力で集まった廃携帯や廃家電等に含まれる貴金属から作られています」と紹介されて、「環境問題も東京オリンピックのテーマ」と再認識。調べてみると選手に贈られたメダル数は約500個。回収量が金は約32㎏、銀は約3500㎏、銅は約2200㎏、これで全メダルを賄えたとのこと。時価に換算すると、金は約2億円、銀は約3億円、銅は約230万円、合計約5億230万円の節約となります。ごみは宝の山ですね。都市鉱山の採掘=レアメタル回収の熱がオリンピックのための一過性でなく持続されることを期待しています。ちなみに、大阪市は2014年から小型廃家電の拠点回収等を実施しています。

 最終日の男子マラソン。気温26度以上の暑さの中で走る選手たち。コース上の給水所にはペットボトル。使うとポイと道路上に。「使用後は回収されてリサイクルにまわるのだから」と思って見ていました。しかしこの考え、リサイクルされるからOKという、リサイクル優先の考えが身に沁みついている!「捨てればごみ、分ければ資源」でなくて「買う前にほんとに必要?何度でも使える?」を実践せねばと思い立ち、ホームセンターに行き、ペット飲料(いつも2Lの健康茶半ダース)を買わずにマイボトルを買いました。(遅いとお叱りはごもっとも。これからはお茶を沸かして入れます。)通勤帰宅途中にスターバックスとタリーズコーヒー店があります。マイボトル持参ならば割引してくれるとのこと。少しでもお得が嬉しい気になります。2019年度国内で販売されたペットボトルは約245億本(PETボトルリサイクル推進協議会) 初心者マークの私が言うのもなんですが、「マイボトルを活用すれば環境負荷の低減と経費節約ができます。皆さんもどうぞ。」

脱炭素とアルミ

 マイボトルの続き。ボトルの底を見るとステンレススチールの表示が。アルミ製なら軽いけど、保温効果に疑問が・・・。アルミは生産に多量の電気を使うから地球温暖化では問題児だなと考えるうち、カーボンゼロは国際的な潮流なので必ず何らかの動きがあるだろうと調べてみました。
 国際アルミニウム協会(IYI)によると2018年世界のアルミニウム部門の排出量はCO2換算で110億2700万トン、世界の総排出量の3%を占めるとのこと。この排出量を左右するのが利用する電力源で、アルミ製造1トンあたりの排出量は石炭火力の場合に15トン、LNGでも8~10トンだそうです。そこに脱炭素化の流れが来て、最近、CO2が発生しない、または発生量が極めて少ない電力源や製造法で作ったグリーンアルミが注目され始めており、ビール世界最大手のA社では水力発電で製造したアルミとリサイクル原料を併用した素材を導入したそうです。
 価格面では従来品より割高のようですが、世界的な流れからするといずれ日本のアルミ製品もグリーンアルミに代わっていくのではないでしょうか。だた、それを根付かせるには、どうすれば?と考えると、消費者の購買動向⇒エシカル消費と気づきました。
 協会では職員向けに環境問題研修を年2回実施しています。2018年から毎年、「SDGsとは何か」をテーマとした講義をうけ、消費行動をエシカル消費の意識で行うことの重要性を教えていただきました。
リユース、リサイクルは「もったいない」の気持ちで取り組みやすいし目に見えるけれど、脱炭素の取り組み、電気使用量の削減は実感しにくい。グリーンアルミ使用とかCO2削減量とか表示されていればわかりやすい、脱炭素社会への流れは加速しているからいずれはそうなるかもしれないけれど。協会は2019中期経営計画でSDGsに沿った取り組みに力をいれると宣言しているので、市民向け環境問題講座でエシカル消費を普及しようと思い立ちましたが、その前に、近い将来、脱炭素への貢献度が製品に表示されたりして選択肢になったとき、価格で選ばず少しでも環境負荷の少ない商品を好む「緑の消費者」になっているように、わが家庭の消費行動を変える家庭内啓発活動をしようと思っています。(言うは易く行うは難しでしょうが)

おわりに、3R・低炭素社会検定

 協会が全国検定事務センターとして、毎年、検定試験を実施しています。今年から大企業が全社あげて受験してくれるとのこと。受験者のすそ野が広がり、検定について「環境問題に理解を深め率先して取り組む人(勝手なネーミングですが環境人)育成の登竜門である」といった社会的な認知度が高まることを期待しています。地域パートナーの皆様のご協力に深く感謝申し上げます。引き続き、よろしくお願いいたします。

村山 晋一

【プロフィール】
村山 晋一

1982年大阪市役所入庁。区役所勤務を経て1988年環境事業局(のちに環境局)に異動。
ごみの収集事務所にてバブル景気(1986~1990)でごみ量急増を目の当たりに。
1992年企画部門に異動。大阪市として初めて減量目標値を定めた一般廃棄物処理基本計画策定に携る。廃棄物の適正処理だけでなく分別収集・3Rを推進する廃棄物行政の転換期に様々な減量施策や行革の仕事を経験。
2010年区役所に異動、区政改革に取り組む。
2018年3月定年退職。同年4月に環境事業協会勤務。理事兼総務部長を経て現職。

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