Vol.148「経済成長に依存しない豊かな社会はどこにあるんだろう?」 鍋谷 剛


「経済成長に依存しない豊かな社会はどこにあるんだろう?」

鍋谷 剛(株式会社 京都環境保全公社)

 

 

 

 2021年6月、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」が成立し、2022年4月施行に向けた政省令について論議が行われている状況にあります。プラスチックの海洋汚染低減といった対策に加え、2050年のカーボンニュートラル(CN)の実現に向けた温室効果ガス(GHG)の削減に向けて中長期のシナリオも描かれつつあります。
 「循環型経済」を実現していくために、私が身を置く「廃棄物処理事業者」は、どんなビジョンを描いていくのか?!今、大きな岐路にあるとも言える状況です。
 処理事業者には、収集運搬、リサイクルを含む中間処理、最終処分、そして循環資源の利用に伴い排出される非エネルギー起源のGHG削減と、廃棄物発電・熱利用による貢献を求められています。これまで焼却・原燃料(再生燃料化したもの)処理に依存していた廃プラスチックは、マテリアルリサイクル(MR)やケミカルリサイクル(CR)に大きく舵が切られようとしています。当社((株)京都環境保全公社)では、廃プラスチックを中心とした原燃料としてRPF・フラフを生産出荷、焼却せざるを得ない廃棄物処理は、廃棄物高効率発電・熱回収焼却炉を建設中ですが、これらで発電される電力は、いずれ国内の電力の実質排出ゼロ化とともに削減貢献度も消滅していくことになります。こういった中で2050年のCNを実現していくことは現在の電力・熱の利活用では不可能で、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)の拡充実現なくしては成り立たず、科学の進歩に委ねざるを得ないというのが実態です。

写真1:新3号炉(廃棄物高効率発電・熱回収焼却炉)建設(2022年7月竣工予定)

 

 こんな実態を打破しようと、科学進歩と経済成長に適応させて企業を存続させていく必要性をビジョンに掲げながら、豊かな生活を約束していたはずの近代化による経済成長が、まさに人類繁栄の基盤を崩壊させようとしている事実の存在に、いやいや待て待て、一人の人間として生きるに足る満足は何か?人々の基本的欲求を満たすことが持続可能な社会を実現することではないのか??19世紀英国の経済学者ジェボンズのパラドックス(資源効率を高めても、結果的にエネルギー消費量が増えるという逆説)を思い出しながら、やっぱりパソコンと悪戦苦闘する日々を送っている自分がここにいます……。

写真2:発泡リサイクル(MRライン)

写真3:RPF製品

 

鍋谷 剛

【プロフィール】
鍋谷 剛(なべたに つよし)

【現職】
株式会社 京都環境保全公社 代表取締役社長
一般社団法人 持続可能環境センター 理事
公益社団法人 京都府産業資源循環協会 理事

【経歴】
1982年 東京理科大学卒業、立石電機(現 オムロン)株式会社 入社
同社 人財開発部長、企業文化統括センタ長 などに就任
2016年 株式会社 京都環境保全公社 専務取締役 就任
2017年 同社 代表取締役社長 就任 現在に至る

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