Vol.131「『食品ロス』とSDG12.3」 渡辺 浩平


「『食品ロス』とSDG12.3」

渡辺 浩平

 

 このコラムの読者なら「食品ロス」とは何かというのはご存知でしょう。
 「本来食べられるのに捨てられた食品」(出典:農水省)のことです。
 食品廃棄物には皮や骨など食べずに捨てる部分もありますが、そうではなくて通常食べる部分のことを指しています。

 ところで、この「食品ロス」というのは和製英語だということは知っていますか?
 世界的には、食品廃棄物の発生源によって「Food Loss」と「Food Waste」を分けています。
 食糧の流れの中で、生産から小売以前の段階で発生するものが「Food Loss」、小売・外食・家庭で発生するものが「Food Waste」になります。


 SDG(持続可能な開発目標)というのも、みなさんお耳にされたことがあるでしょう。
 国連で2030年までに実現しようとしている目標群です。17の目標の下に169のターゲットが設定されています。
 そのうちのひとつ、ターゲット12.3は「2030年までに小売・消費レベルにおける1人当たりのFood Wasteを半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおけるFood Lossを減少させる」とされています。


 さて、この「Food Waste」とは厳密には何をさすのでしょう?
 現在、国連環境計画(UNEP)と食糧農業機構(FAO)を中心に定義についての議論が行われています。
 日本でいう「食品ロス」に該当するものをさすのか、食べない部分として意図的に除去された部分も含むのか、また材質や飼料にリサイクルされた場合も含むのか、といった点が論点になっています。


 今のところ、意図的に除去された部分も含む、リサイクルされた場合は含まない、ということになりそうな模様です。
 あれ? 食品廃棄って、食べられるものが捨てられていることが問題なのではないでしょうか?


 もちろん、ふつう食べない部分の有効利用も重要ですが、3Rの原則からすればリサイクルよりも発生抑制のほうが優先です。
 また、SDG2の持続可能な食糧生産(「飢餓をゼロに」)との整合性からも問題がありそうです。


 筆者もこの議論に加わらせていただき、ちょっと抵抗して「本来食べられる部分の廃棄を削減するのが重要であり、それも別途計測することが望ましい」とガイドラインに入れていただくことになりました。
 SDGの定義がどうであれ、「食品ロス」の量を把握し、その削減に向けて社会のしくみや人々の意識が変わっていくことは重要です。
 みなさまの働きかけに期待しています。

 

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渡辺 浩平

【プロフィール】
渡辺 浩平(わたなべ こうへい)

帝京大学 准教授。学部学生時代以来、在住の国や所属の学部学科は転々としても、一貫して廃棄物の研究を続けてきている。
東京都小金井市廃棄物減量等推進審議会副会長
東京都小平市廃棄物減量等推進審議会副会長
東京都渋谷区清掃リサイクル審議会委員

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