Vol.122 「廃材か宝の木か──。「古木」として再利用することで世の中が変わる。」 山上 浩明



「廃材か宝の木か──。
「古木」として再利用することで世の中が変わる。」

山上 浩明

 2020年には1000万戸の空き家時代が到来すると言われている。
 そのうち約2.5%に当たる25万戸が、「古民家」と推計されており、2033年には50万戸に達すると予想されている。
 地方に点在する古民家は、空き家となって過疎化の象徴となっていくばかりか、最悪の場合老朽化による倒壊という危険もあり、一般的な空き家とは、また異なる社会問題の要素が指摘されている。


 そんな古民家を山翠舎では、「再生を待つ木立が眠る、もう一つの山」に見立てている。
 ここに眠る木立は、ただ取り壊しただけでは廃材となるが、柱や梁の1本1本の属性・特性しっかり記録・管理することで、「ストーリー性のある素材(語れる素材)」として新たな価値を付加し、再生することができる。
 こうした古材を当社では『古木(こぼく)』と定義している。
※「古木/こぼく/koboku」は山翠舎の登録商標。


 古民家には、現在では珍しい樹齢100年以上のマツやケヤキの大木が使われていることも珍しくなく、仕口や継ぎ手、釿(ちょうな)、鉞(まさかり)などで掻き込んだ跡は、失われつつある日本の伝統技術が凝縮した姿と言っても過言ではない。


 こうした手仕事のぬくもりある素材を商業施設や宿泊施設等のインテリアをはじめとしたデザインとして再利用・施工することで、インバウンドの観光資源となるなばかりか、事業者にとっては注目を集め大きな収益を獲得できる新たなビジネスチャンスとなる。
 昨今の「古民家カフェ人気」などがそれを雄弁に物語っている。


 社会問題であるはずの「空き家の古民家」は、視点を変えると貴重な集客装置となり、さらに廃材を減らし木材を再利用することは地球環境へ寄与することにもつながる。
 社会問題は、倫理や問題意識を唱えているだけでは解決しない。
 やはり利益を生み出す仕組みと一体にすることで、その社会問題の解決は促進される。


 海外では、地球環境を守りつつ、利益を生み出すビジネスモデル「サーキュラー・エコノミー」への移行が進んでいる。
 製品を「使って捨てる」これまでの直線型経済から、「使って再び使う」循環型経済への移行。
 さらに国際的な潮流で、昨今日本でも話題になってきている「SDGs」の考え方とも古民家・古木の再利用はマッチする。


 100年スパンで世の中を考えていくことが、サスティナブル社会の実現につながっていく。個人、もしくは企業ができる限り長く大切に使っていくことを意識していこう。


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長野県大町市にある山翠舎の古木倉庫兼木工場の様子 

 

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山上 浩明

【プロフィール】
山上 浩明(やまかみ ひろあき)

株式会社 山翠舎 代表取締役社長

1977年長野県長野市出身。
父方の祖父が建具職人、母方の祖父が材木商という家で育つ。

東京理科大学で環境問題を研究。
卒業後、2000年にソフトバンクに入社。
ネットワーク機器販売の営業として活躍し、社長賞を受賞するなどの結果を残した。
2009年に(株)山翠舎代表取締役社長に就任してからは、いち施工会社・工務店の枠を飛び越え、古木に特化した集中戦略にシフト。

常時4000本以上の古木のストックや、古木を使った商業施設・公共施設の設計・施工数約400件などは、いずれも日本一を記録している。
その他、2018年には世界的な起業家顕彰プログラムである「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー ジャパン」の甲信越代表にも選出されている。

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