Vol.98 「Free Flea Market ~捨てる神と拾う神~」大関 はるか



「Free Flea Market ~捨てる神と拾う神~」
手放すよろこび、作るたのしみ。それはお金で買えないもの。

大関 はるか


 みなさんは3Rをすすめるため、持続可能な社会を作っていくために、どのような活動やライフスタイルを送っていますか?
 大量生産、大量消費、大量廃棄、情報洪水の社会を作ったのは人間ですから、持続可能な社会もまた私たち人間が作れると、私は信じています。
 とは言え、これまでに個人でできることをさんざんやってきたつもりですが、社会が持続可能な形に変わったとは言えません。


 たとえば、17歳からMY箸を使って20年、個人的には割り箸を割らずにやってきました。
 この間、塗り箸のお店もとても増えましたし、私のライフスタイルに影響を受けたと言ってくれる人もいないわけじゃありません。
 このような小さなことを100も200もやってきた中で、それらを無意味だとは思いませんが、持続可能な社会への舵取りは容易でありません。


 そこで、2010年頃から極力「ごみ減量」や「省エネ」という表現を使わずに、楽しそうなこと、おもしろそうなことをイベントとして仕掛けています。
 参加者にとって、いかに「印象に残る日にするか」にこだわっています。
 そのために「なるべく日常から遠い状況を作る」という演出をしています。
 どういうことか、ひとつの事例をご紹介したいと思います。


Free Flea Marketチラシ(2010年度版))
Free Flea Marketチラシ(2010年度版)

 私がここ数年、あちこちで実験的に開いているのは「フリーマーケット(のみの市)」の前に無料で自由という意味のFreeをつけた「フリーフリーマーケット」です。
 「もう使わない、でも捨てるのはもったいないものを持っている人」に「捨てる神」になってもらい、「気に入ったものを持ち帰る人」に「拾う神」になってもらいます。


 お金を介さない代わりに「言葉がいるよ」というルールにしています。
 お金を払う必要はないけれど、黙って持ち去ることはできません。
 そこにいる誰かに、これがほしい旨の声をかけ、その誰かが「いいと思う」「似合っているね」などと答えてくれたら、それはあなたのものになるというルールです。
 参加者間のコミュニケーションを増やすことで、「印象に残る日にしたい」という思いもありますし、「業者」や一部の人がガサーッと持っていってしまうようなことがないようにするためのゆるやかな「仕掛け」でもあります。
 「業者禁止!」とか、「一人◎点まで!」というNGワードや制限はよい空間を生み出さないので、「仕掛け」で勝負するしかありません。


 洋服だけに限定してやってみたり、道具だけに限定してやってみたりしています。
 洋服のときは、会場の服を色で分けています。
 普通のお店はサイズで分けるので、なるべく「非日常」を作るために、色で分けます。
 服と言っても所詮古着ですから、ぐちゃっとしているとゴミにも見えてしまいます。
 それを色で分けると、これでなかなか空間がアーティスティックになります。
 それも参加者の手によって自ら置いてもらうので、みんなで作るひとつの大きな空間の一端を担うわけです。
 この時「この服は何色に分類すべき?」などと、知らない人の間で勝手に会話も生まれます。
 また、鏡もわざと置いていません。
 人に見てもらいながらほしいものを決めてもらいます。


 こうして「普通の洋服屋さん」からなるべく遠い状況を作ります。
 これらはすべて「印象に残る日にするため」の仕掛けです。
 サイズごとに分けてほしいとか、鏡はやっぱりほしいとか、希望はもらいますがこの点は決して譲りません(笑)


 たった一日のイベントであったとしても印象に残りさえすれば、次に服を処分したくなったときに、「誰かに譲ろうかな?」「友達に声をかけて小さな輪で洋服交換をしようかな?」「捨てるのはもったいないな」などの発想につながり、3R行動に至ると考えています。


 ひとたびサービスを受ける側と提供する側のような二極化した構造ができてしまうと、クレームなどにも発展してしまいます。
 私たちはいつの間にか、サービスを受けることに慣れ過ぎています。
 このことが、地球環境の一端を担っているはずの意識を欠落させている気がします。
 一見不親切なように見えること(たとえば、持ってきたものは自分で並べてくださいなど)も、実は参加者の主体性を引き出し関わってもらうことで、参加者にとって満足度の高いイベントになるということはよくあります。


 参加者の感じ方は、「初めて会った人とも盛り上がって楽しかった」「ほしい服をいろいろもらえてうれしかった」「いらない服を断捨離できて助かった」「自分が出した服を“拾う神”と偶然話せて、いいことした感じ」などさまざまです。


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 Free Flea Market 道具編の様子(2015年度)


 家事にはじまり、仕事でも地域の活動でも同じですが、自分の身の回りのことについて自分たちで責任をもち、主体的にかかわる姿勢が、持続可能な社会を作っていくことにつながっていると信じ、今後もおかしな場作りを通じて3R精神が意識していない人まで広く浸透していけばと思っています。

 

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大関 はるか

【プロフィール】
大関 はるか(おおぜき はるか)

1979年 リビアのトリポリ生まれ、栃木県宇都宮市育ち。
長崎大学環境科学部1期生。
デンマークのフォルケホイスコーレInternational People's College を経て、
2003年より京都の(有)ひのでやエコライフ研究所で働く。
NPO法人ワークショップデザイナー推進機構理事。

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