Vol.89 「リサイクルは負けない!」大澤 正明



「リサイクルは負けない!」

大澤 正明


 リサイクルはどこへ行ったのだろうか。
 あの嵐のようなリサイクルフィーバー。

 ある所は一人一日100グラムの減量を目標に掲げ、ある所は空きびんポストを設置し、ある所はコンポスト容器に助成金を交付し、ある所はフリーマーケットを開催し、ある所は従量制の有料化を実施するために市民と膝を交え、ある所はリサイクルプラザで草の根の環境教育に挑戦する。
 マスコットマークが作られ、キャッチフレーズが公募され、小学生用の副読本が作成される。
 専門誌は欧米の視察結果を報告しドイツを見習えと声を大にするし、国内の取り組み事例を紹介する記事に溢れた。
 ごみ問題に取り組む学者が圧倒的な勢いで増え、自治体の創意工夫が活発に行われ、市民は草の根のリサイクル活動に目覚めた。

 その結果、1990年に5%だったリサイクル率が6年間で10%に届き、さらにその後の10年間で20%にまで達した。多くの市民は10種を超える分別に苦も無く協力できるようになったし、2000年以降はごみ排出量も減量に転じた。



 今、そのリサイクルフィーバーはどこにいってしまったのだろうか。
図に示すように、2000年をピークとして「リサイクル」という言葉が新聞で取り上げられる回数は大きく減少し、「リサイクル」をタイトルに冠した書籍はすでにほとんど発刊されなくなった。
1999年の「循環経済ビジョン」で提唱された3Rという概念は、その後10数年が経過しているというのに、3Rの意味を理解している人はわずか3分の1にしか過ぎない。(内閣府、循環型社会に関する世論調査、平成24年)

 しかし、ごみ排出量がやっとバブル経済以前の状態に戻っただけで満足していいのだろうか。
 「リサイクル」という言葉は、リサイクル率を高める役割に貢献しただけではなく、ごみ処理というある種差別の中にあった事業に光を当て市民権をもたらし、さらにごみ問題に関する環境教育を通して、人々のマナーを熟成させるという社会的にも大きな貢献を果たしてきた。
 そのようなことを踏まえて、今、私たちNPO法人生活環境ネットC&Cは、全国の多くの自治体に設置されているリサイクルプラザを舞台に、ごみ対策を通して人々のライフスタイルや社会・経済活動のあり方を見直すということに再び挑戦したいと思っています。

 京都大学大学院の浅利美鈴准教授、旧厚生省でリサイクルプラザという制度の立ち上げに取り組んでこられた八木美雄氏、リサイクルプラザの元祖ともいえる千里リサイクルプラザの立ち上げ時から関わってこられた土屋春夫氏、リサイクル市民運動のオーソリティーの山本耕平氏、ごみ問題を市民の身近な場所に持ってくることに取り組まれている大阪産業大学講師の花嶋温子氏等々、長い経験と深い知見を有する方々の協力をいただきながら、その第一回の研修会を10月17日(月)、佐賀市で開催することにしました。

 志を同じくする方々のご参加を切に望みます。(詳しくはこちらのリーフレットをご覧ください)

 

vol.89_02

大澤 正明

【プロフィール】
大澤 正明(おおさわ まさあき)

・昭和48年4月~平成25年6月:一般財団法人日本環境衛生センター西日本支局に勤務
・平成26年5月:NPO法人生活環境ネットC&Cを設立→webサイトはこちら
・昭和58年:月刊廃棄物100号記念懸賞論文1等受賞
 (廃棄物処理に広告の活用を)
・平成18年:図表で読み解く 現代のごみ問題、日本環境衛生センター
・平成22年:廃棄物資源循環学会論文賞受賞
 (公衆衛生対策におけるごみ処理の役割)
・平成25年6月~平成28年3月:JICA草の根パートナー型プロマネ
 (ブータン王国ティンプー市における廃棄物対策)


ページの先頭へかえる