昔ながらの暮らしの道具たち―湯たんぽ


昔ながらの暮らしの道具たち―湯たんぽ』


山口 茂子  

皆様、こんにちは。
東京在住の山口茂子です。

今年も暑かった夏が終わり、残暑も少しずつ和らぎ、今また秋も深まろうとしています。
エコを意識する人は少しずつ増え、私のまわりでは、節電もごく日常的に当たり前のことのようになってきました(どのくらい実行できるかは、人それぞれだと思いますが・・・)。夏の間は、扇風機や団扇を駆使して、エアコンを使いすぎないようにしてきましたが、今度は暖房を控える工夫をする季節です。意識の切り替えが忙しいですが、節電アイデアも四季折々、楽しみながら取り組むことで生活に潤いが感じられます。

今回は湯たんぽを調べてみました。湯たんぽそのものは、このところ近所の雑貨店やスーパーなどでも、気軽に入手できるようになりました。さまざまな用途にあわせて、デザインや色、形に工夫が凝らされた製品がたくさん販売されています。なかには、電子レンジで温めるものまであります。カバーも女性や子供にも喜ばれそうな華やかなデザインやキャラクターものなどたくさんの製品が見られます。

私が自宅で一番愛用しているのは、金属製の昔からある形のものです。最近は、目新しいデザインのものよりも昔からのデザインのものについ惹かれてしまいます。いつも、熱めに沸かしたお湯を入れ、布団に入る1,2時間くらい前に足元に置いておきます。夏の間は、扇風機を弱めにかけて眠ることができますが、ガスなどの火がつくものをつけたまま眠るのは不安です。その点では、エアコンならば安心ですが、ただでさえ乾燥する冬場にエアコンをかけたまま眠ると、朝にはのども皮膚もカサカサに乾燥して、寝ている間から息苦しくなってしまいます。頭寒足熱が理想的といいますが、部屋の温度が高すぎても頭がぼーっとして快適な眠りを妨げます。湯たんぽは、足元を温め頭はひんやり、空気の乾燥や汚れもなく、朝まで快適に休むことができます。環境だけでなく健康にも良さそうです。

自宅には、金属製のタイプのほかに、ゴム製のお湯入れに、くまのぬいぐるみ型のカバーがついたタイプ、プラスチック製のタイプがありますが、布団のなかで使うだけでなく、部屋でくつろぐ時はくまをひざの上に抱いていたり、板張りの部屋では金属製やプラスチック製を足元において、足をのせて使ったりと大活躍です。材質による違いが気になるところですが、やはり金属製のものはお湯がさめにくく、長時間温かさが持続するので寝るときはもっぱら金属製を愛用しています。1度、プラスチック製と金属製に同じ温度のお湯を入れて布団に入れておいたところ、プラスチック製は朝にはすっかり冷たくなっていたにもかかわらず、金属製はほんわか温かく感心しました。金属製はほとんどが鉄でできているようですが、中には銅製の高級湯たんぽもあるようです。熱伝導率が高いことから、鉄製以上に保温性が高く、殺菌作用も認められているそうです。陶器製もやはり保温性が高く長時間持続すること、じんわりと温かさが伝わってくるところが人気のようです。

この陶器製の湯たんぽは、一時はほとんど姿を消しかけていたのが、エコブームで人気が再燃しているとありました。江戸時代には将軍徳川綱吉が犬型の陶器の湯たんぽを使用*1)していたようなので、湯たんぽの元祖は陶器製なのでしょうか。壊れにくく、軽くて丈夫なプラスチック製が主流になりつつあるなかで、静かなブームとなっている陶器製の湯たんぽに昔ながらの道具の底力を感じます。スーパーなどの量販店に行ってもプラスチック製の湯たんぽの陰になりながら、金属製の湯たんぽは必ず絶えることなく置かれています。昔からの湯たんぽを愛好する人が少なからずいる証拠です。陶器は割れやすいというデメリットがあり、金属も腐食や錆の心配はありますが、多少手入れが面倒でも、一度使うと、惹きつけて離さない快適さがあります。むしろ快適な道具は愛着がわくので、手入れも苦にはならないかもしれません。きれいなカバーを手作りするなど、工夫しながら物を大切に使う楽しさもあります。

湯たんぽに使ったお湯は、朝ほんのり温かさが残っているので、洗顔などに使ったというのも昔の知恵でした。どんなものでも最後まできちんと使い切るという精神は、道具とともに受け継いでいきた日本人の美徳だという気がします。エコブームのなかで、昔ながらの湯たんぽが、再び蘇り愛されているという事実は、良いものは受け継がれていくのだという心強さを感じられて、うれしい気持ちになります。鉄製は値段も千円くらいから、陶器製は2千円くらいからと手ごろなようです。未だ湯たんぽ、未経験の方は、今年の冬はぜひ1台いかがでしょうか? くれぐれも低温やけどにはご注意くださいね。

今回も、最後までご覧いただきありがとうございました。

<参考>
*1)三重県立博物館





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