昔ながらの道具たち-おひつ-


『昔ながらの道具たち-おひつ-


山口 茂子

皆様、こんにちは。東京在住の山口茂子です。
今回も昔ながらの道具のお話です。

 ある日の夕食
ある日の夕食、主役は土鍋ごはんと野菜でした。

 皆さんはごはん好きですか?
 もちろん、ほとんどの皆さんがごはん大好きなのではないかと思います。
 白米、玄米、分づき米、雑穀などを混ぜて炊いた五穀米、豆を混ぜて豆ごはん、山菜やきのこ類などと一緒に炊き込みごはん、最近は食べ方もいろいろで、毎食、毎食楽しくおいしくごはんをいただくことができます。

 大型家電店に足を運ぶと、電気釜の種類もさまざまで、釜炊きのような風合いにできるもの、おこげができるもの、電子レンジでも炊けるもの、一人用から大人数用など、お米に対するこだわりや、生活様式の違いへ対応しており、値段も本当にたくさんあって、どれを選んでいいのかさっぱりわかりません。

 だから、というわけではないですが、最近うちでは土鍋でごはんを炊いています。最初は、時間や火加減も見なくてはいけないし、少々面倒くささは感じていましたが、慣れてしまうと、早く美味しく炊き上がるので、なかなか便利で気に入っています。

 さて、ごはんを炊くときは、たいてい1回食べきりで、食べる直前に炊き上がるタイミングで炊くのが通常のやり方だったのですが、あるとき、少し早目に炊き上がったのを、そのまま少し放置したことが2,3回続きました。冷めたごはんも、実は結構好きなので、時間をおいてからいただくことは気にしていませんでした。やや冷めかけたごはんをお茶碗にもって、一口いただくと、どうも思った仕上がりと違うのです。

 何となくぺしゃっという感触がします。原因はすぐにわかりました。 蒸しあがって火をとめたあと、そのままにしたことで、土鍋の蓋の裏側の水分がしたたり、水っぽくなってしまったみたいなのです。
 思いついたのが、おひつです。
 昔の人は、ごはんが炊けるとすぐにおひつに移していたのではなかったのかしら・・・。

 さっそく調べてみますと、思ったとおり、職人さんの手で、昔ながらの方法でおひつの制作販売をしている会社のサイトには、「炊きあげたごはんの余分な水分をとって、さらにおいしくしてくれる昔ながらの優れた道具」と書かれています。

 この天然の樹木の特性を生かした水分調整で、冷めたごはんもふっくらと美味しくいただくことができるというのです。さらに、炊き立てのときに余分な水分を吸収してくれるだけでなく、冷めてからは、逆に水分を補ってくれるとまで書かれています。こうして水分の調整がなされたごはんは、水気でべちゃべちゃになることもなく、乾燥して固くなることもなく、雑菌からも守られて、しばらくの間美味しさが保たれることになります。
 
 おひつは、まるで、お母さんが赤ん坊の世話をするみたいに、ごはんがしっかりと守ってくれている、そんな気がします。また、一口におひつと言っても、スギであったり、サワラであったり、ヒノキであったりと、その土地ごとに入手しやく適した木が使われており、形状も、取っ手のついた蓋がのった関西式のもの、すっぽりとかぶさるような蓋がついた江戸式と少しずつ違いがあるようです。本格的に日本全国のおひつの調査をしたら面白いかもしれません。

 ところで、節電のために電気釜での長時間の保温を控えようと、一時期盛んに言われていましたが、おひつを使えば、美味しく節電も可能です。昔、工業製品、化学製品がまったくなかった頃、わたしたちの暮らしのなかでは、住む家から始まり、家具類や数々の道具はかなりの割合で木に頼っていたのだということは容易に推察ができますが、木を伐採しすぎたりということはなかったのでしょうか。江戸時代など、木や木製品の需要と供給のバランスが保たれていたのかは、今、手元に何も資料がないのでわかりません。
しかし、おひつは、きちんとお手入れをすれば、ほぼ一生ものと言えそうです。

 実際にお店のサイトでは、修理の相談を受け付けており、50年以上前に作られたおひつを新品のように蘇らせています。おひつばかりでなくたらいに作り替えたりといったこともできるようです。一つのおひつが何世代にも渡って使い継がれていく、そのような使い方をすれば、必要以上に木を伐採しすぎることもなく、うまく自然界との調和がとれるかもしれません。
現代は、いろいろなものが簡単に手に入りますが、台所用品などは、水回りで使うこともありすぐに汚くなったり、壊れたりと短いサイクルで買い替えることが普通になっています。たいていのものは修理するより買い替えたほうが安価で簡単です。

 目の前の損得だけでなく、長い目で見て、必要なもの良いものを選んで、日常の暮らしに取り入れていくことも環境にやさしい暮らし方。
少々高価ではありますが、少しずつお金を貯めて、お気に入りのおひつを探して購入したいと思います。

 今回も拙い文章を最後までお読みいただいて有難うございました。

<参考>
以下のサイトを参考にさせていただきました。
〇おひつの修理について、おひつの種類、おひつの効果など
志水木材産業株式会社様(長野県木曽町)
http://shimizumokuzai.jp/ohitsurepair
http://shimizumokuzai.jp/ohitsu
〇おひつの使い方、効果など
ディアンドデパートメント株式会社様
http://www.d-department.com/jp/ohitsu/


 

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