Vol.24 低炭素社会における新しい都市デザインのこころみ 三浦 浩之



国低炭素社会における新しい都市デザインのこころみ 三浦 浩之


◆「都市を低炭素化する」とは
都市の低炭素化において、まず始めにお話すべきは、平成24年2月に発表された「都市の低炭素化の促進に関する法律案」であろう。これは、‘社会経済活動その他の活動に伴って発生する二酸化炭素の相当部分が都市において発生しているものであることに鑑み、都市の低炭素化を図るため、都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針の策定、市町村による低炭素まちづくり計画の作成及びこれに基づく特別の措置並びに低炭素建築物の普及の促進のための措置を講ずる’ものである。なお、ここでの「都市の低炭素化」とは、都市における社会経済活動その他の活動に伴って発生する二酸化炭素の排出を抑制し、並びにその吸収作用を保全し、及び強化することである。

 具体的な都市の低炭素化のメニューは、「都市機能の集約化」、「公共交通機関の利用促進」、「建築物・自動車の低炭素化」、「面的なエネルギー利用の合理化」、「二酸化炭素の吸収源対策」であり、これらはそれ以前に示された『低炭素都市づくりガイドライン』での対応メニューと同じである。これらのうち、「都市機能の集約化」と「公共交通機関の利用促進」は、これからの人口減少が進むわが国の都市では、長期的にかつ着実に取り組むべきものであろう。これらによって都市をエコ・コンパクトシティとすることが必要となっているのである。なお、このエコ・コンパクトシティとは、都市内の中心市街地や主要な交通結節点周辺等から、都市機能の集積(医職住近接化)を促進する拠点(集約拠点)を、地域特性を踏まえて選択して位置付け、複数の集約拠点と都市内のその他の地域とを公共交通を基本に有機的に連携させる拠点ネットワーク型の「集約型都市構造」を持つ都市のことである。都市周縁部を拡大して都市化することを基本的考え方とするこれまでの都市計画が新たな局面を迎えることになる。

 本法律案では、国が策定する基本方針に沿って市町村は低炭素まちづくり計画を策定し、民間等の低炭素建築物の認定を行う流れとなる。市町村の低炭素まちづくり計画は地域の実情に応じてできるところから取り組み、民間投資が入りやすくなるよう事業の予見可能性を高めたり、補助金を重点的に配分したりすることになっている。

◆ 革新的エネルギー・環境戦略
また、この法律案は東日本大震災を契機とするエネルギー需給の変化や国民のエネルギー・地球温暖化に関する意識の高揚等を踏まえたものである。
現在、政府は、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、エネルギー・環境戦略の見直しを行っている。2012年6月29日に、政府の「エネルギー・環境会議」(議長:古川国家戦略担当大臣)が、2030年のエネルギー・環境に関する3つの選択肢(原発依存度を基準に、①ゼロシナリオ、②15シナリオ、③20~25シナリオ)を取りまとめた。そして、この選択肢について国民より意見を直接聴取する「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」を全国11都市で開催している。そして、今後、この意見聴取会をはじめとした3つのシナリオに関する国民的議論を経て、8月にエネルギー・環境の大きな方向を定める革新的エネルギー・環境戦略を決定し、エネルギーミックスの大枠と2020 年、2030年の温室効果ガスの国内排出量等を示すことになっている。また、核燃料サイクル政策については、原子力委員会が提示した選択肢等を踏まえつつ、エネルギーのミックスの大枠に応じて、政府が整理し決定することになっている。
そして、この8月に決定するエネルギー・環境戦略を受け、速やかにエネルギー基本計画を定めること、年内に原子力政策大綱や地球温暖化対策、グリーン政策大綱をまとめることが予定されている。
この、今後の革新的エネルギー・環境戦略が国民的議論を経てどのように決定されるかで、都市の低炭素化についても、それを進めるスピード感やより重点を置くべき対策が異なってくると思われる。

◆ ”都市戦略”と”都市の低炭素化”
このような都市の低炭素化への動きとは別に、都市はグローバルな競争下にあり、これに打ち勝つ(生き残る)ことが求められている。
グローバル化の進展に伴い、国境を超えたヒト・モノ・カネの動きが拡大を続けるなか、それを魅きつける都市の役割はますます増大していて、とくに、商業、工業、金融、行政等の各種機能が集中する大都市は、国全体の成長エンジンと位置づけられている((社)日本経済団体連合会提言「わが国の持続的成長につながる大胆な都市戦略を望む」2010年3月)。この提言では、東京、大阪、名古屋に代表されるわが国の大都市は、バブル経済の崩壊を経て日本市場自体が縮小するなか、激しさを増すアジアの都市間競争への対応にも出遅れ、世界のトップランナーとしての魅力や活力を失いつつあると指摘している。さらに、地方都市についてもモータリゼーションの進展などによって、かつて都市の中心部に位置していた商業、公共施設等が郊外へと移転し、中心市街地が賑わいを失うなど衰退が続いている。加えて、人口減少・少子高齢化、地球環境問題、地方財政の悪化といった課題も都市のあり方に大きな変化を迫っているという危惧も示している。
都市が持続していくためには都市間競争に打ち勝たねばならない(そうでないと人口・産業が他都市へ移動し、急速に衰退する)が、それには継続的な投資を伴う都市開発、とりわけユビキタス社会を具現化するような分野での開発が必要となる。これは、都市の低炭素化を短期的には逆行する動きとなることが危惧される。
都市を創ることは長い時間を要し、かつ、多数の人々の多様な思いが存在するなかで生み出されていくものである。どのような統治力を背景として、強い意志に基づいて都市を低炭素化し、都市間競争で生き残るようにしていくのか、まだ、私には答えがないが、これからその答えを得るために、さらに研究を進めていきたい。


 





三浦浩之

【プロフィール】
三浦浩之(みうら ひろゆき)
広島修道大学 人間環境学部長

【略歴】
1978年 山口県立徳山高等学校 卒業
1982年 関西大学 工学部 土木工学科 卒業
 同大学助手、講師を経て、2002年に広島修道大学人間環境学部に教授として着任。2010年より学部長。

主な研究テーマ
持続可能な社会実現に向けての社会システム及び人々の価値観の変革に係る研究
キーワード
環境システム、都市計画、LCA、環境社会心理、リサイクル
博士(工学) 技術士(水道部門)
主な著書
環境に配慮したい気持ちと行動~エゴから本当のエコへ、技報堂出版 2007/05(共著)

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