Vol.91 「環境リテラシーは人類存続・発展のための必須のエンジン」小林 光



「環境リテラシーは人類存続・発展のための必須のエンジン」

小林 光

 10月13,14日に東京で、OECDとアジア開銀研究所が共催し、アジア初となるGIFF(グリーン・インベストメントとファイナンシングに関するフォーラム)の第3回会合が開かれた。
 世界各国、そして国際機関から、多くの銀行家や経済専門家が集まった。
 筆者も、まるまる2日間、議論を聞かせてもらった。
 チャタムハウスルール(発言者を特定して部外に紹介してはいけない)の下での本音の議論だったからか、環境性能の良い製品、サービスそしてプロジェクトが成功するように資金を供給し、他方で、環境をタダで使って壊して儲けを生むような事業には資金を出さないようにしょう、と熱心な議論が行われた。お金の使い方にも、環境との関係が問われる時代になったのだ、と、改めて強い感銘を受けた。

 実際、このほど都知事に就任した小池知事は、都が市民や機関投資家から借り入れる際に発行する債券を、いわゆるグリーンボンドにして、都が行う環境性能の良い事業に選択的に充当する、仕組みを設けることをさっそく発表した。
 世の中はどんどん変わっている。

 環境を壊すことで儲けを生み出す商売を続けていては、ついには、儲けにかえるべき環境をすべて失うことによって人類は自滅の道を歩むことになろう。
 これを避けるには、あらゆる商売が、その持つ環境側面をチェックし、環境への負荷を減らす取り組みをして、環境を壊さずに儲けを出すビジネスモデルへの変革を成し遂げていかないとならない。
 逆に言えば、あらゆる商売に、エコビジネスへと飛び立っていくチャンスがあるとも言えよう。
 金融という最も自然から遠かった分野での最新の議論を聞いていて、いよいよ、環境の目利きの出番だと確信した次第である。
 環境リテラシーの高い方々のますますの活躍を祈念する。

 



【プロフィール】
小林 光(こばやし ひかる)

・元環境事務次官
・慶応義塾大学政策 メディア研究科特任教授
・工学博士

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