Vol.80 「ごみは環境学習の入口」 三枝 信子



「ごみは環境学習の入口」

 

三枝 信子

環境全般をテーマとして活動をしていると、実感として思うのは「ゴミは環境学習の入口」だということです。
 特に環境のことなど何も考えていなくても、日常生活で、ゴミは出てきます。自炊をすればゴミは減り、弁当やレトルトなどを利用するとゴミは多くなります。何かものが壊れてもゴミになるかもしれません。「環境について」などと大上段に構えなくても、ふと目を向けるだけで取り組めるのがゴミ問題ではないでしょうか。
 ただ、それだけに、細かな課題が多いのもゴミではあります。

1997年に京都で気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が開催され、気候変動による温暖化の危機がクローズアップされるようになってから、市民の環境に対する意識は大きく変わってきました。
 身近なものからグローバルなものまで、さまざまな環境課題に目を向けるようになり、意識も向上してきました。それとともに3Rという言葉も、この10年ほどで、少しずつ一般的になってきたと思います。
 マイバッグを持って買い物をすることは、以前はほとんどの人が行っていませんでしたが、今は誰もが1つや2つはマイバッグを持っていたり、スーパーなどでもレジ袋が有料になったり、マイバッグでお買い物をするとポイントがつくなど、マイバッグを推進する店も増えています。これは、グリーンコンシューマの活動などの賜物でもあります。ただ、マイバッグは持っているものの、日常に使うバッグになってしまったり、家に置いてあったりと、充分に活用されているかと言うと、まだ課題は残っています。使いやすくする工夫、持ち歩きやすくする工夫などが必要でしょう。

 また、今後は、ぜひ、使い捨てのビニールの傘袋の減量に、マイ傘袋を持つ運動が広がってくれればと思っています。先日、壊れた傘から傘布を取り、傘袋に作り替えてマイ傘袋をつくる講座を行いましたが、とても好評でした。買い物に行く時にマイバッグを持って行くのと同様に、雨の日にはマイ傘袋を持って行くことが、もっと一般的になればと願っています。

 グローバルな話から足元や毎日の生活のことまで、幅広く考えて行動できる人が一人でも増えれば、多くの環境課題は解決に向かうでしょう。大事なのは、それらの課題が個別に存在するのではなく、繋がり合っていることを理解していただくことです。
ゴミ問題も当然、さらに広く様々な環境問題と繋がっています。ゴミの分別も多くの自治体が取り組み、リサイクルの品目も増えてきましたが、リサイクルをするのには多くのエネルギーが使用されます。ゴミを焼却・分解しても、水に流しても、目に見えなくなっても物質がなくなるわけではありません。 
 リーダーとなったみなさまが、それらを踏まえ、単にゴミを減量・リサイクルすることだけではなく、そもそもの発生抑制について常に頭のどこかに置いて考えていただくことで、そこから多くの方に、環境問題の本質が伝わっていくことと思います。ぜひ、一人でも多くの方が環境のことを考え、行動する人になっていただけるように、早速に動き出していただければ幸いです。

 個人的な満足ではなく、循環型に向けて社会を変えていくためには、どう行動し、どう活動すべきか?
 自問自答の毎日です。ご一緒に、悩みながら、楽しくいきましょう。

Vol.80三枝さん01
 三枝 信子

Vol.80三枝さん02

 

 

 

【プロフィール】
三枝 信子(さいぐさ のぶこ)

NPO法人 川崎フューチャー・ネットワーク代表。
「市民の力で川崎を“環境都市”に!」をスローガンに、 川崎市を基点に、日本全国の環境団体とネットワークをしながら活動中。 誰かに教えてもらうだけではなく、自ら学ぶ場を設けたり、実際に現場に足を運ぶことで、体感しながら学ぶことを大事にしています。また、活動テーマも、気候変動、生態系保全、循環型、公害、交通、まちづくりなど多岐にわたり、それらを繋げて考えるビジョンづくりを行っています。 環境ファシリテーター。環境カウンセラー(市民部門)。


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